無職・ブランクありのうつ病患者の再就職を考える

日本では履歴書に空白が出来ると厳しい。ブランクの理由が病気であればなおさら厳しい。

日本は終身雇用は崩壊したと言われていても、やはり「終身雇用的空気」は色濃く残っていて、新卒から働き続けた人と「その経歴を生かして途切れなく転職」した人が本流を成しています。
儒教的というのでしょうか。年上の部下を使うのをとても嫌がる傾向も強いですよね。

結果、一度辞職してブランクもつくってしまうと、再就職はとても厳しくなる。

倒産や介護等の事情でやめた人の再就職も厳しい世の中ですが、辞職理由がうつ病その他の病気の場合、求人企業側は健康状態を心配しますのでもっと・・・。

暗澹たる気持ちになります。
今、会社を辞めようか悩んでいる人には、安易には辞めるなと言いたいです。
でも、パワハラは過重労働など会社自体が発病の原因のこともあるし、既に辞めている人もいるし、休職制度などがあったとしても、病気が長引けば辞めざるを得ない状況に、追い込まれていきますよね・・・。

私は長いブランクを経て、今は細々ながら仕事をしています。形態は、在宅業務。雇用ではなく、個人事業主(フリーランス)の立場で仕事を貰っていますので非常に不安定ではあるのですが、未だに「普通の就職」とは程遠い体調で、仕事はもう無理だと思っていたのでこの体調を理解した上で仕事を振ってもらっているのはとてもありがたいことです。

無職・ブランクありのうつ病患者の再就職の方向性

私は、今現に無職・ブランクありで、かつ働く上では「一定の配慮が必要な」うつ病患者が再就職を望む場合、希望があるとすれば

  • 障碍者雇用
  • 就職先:人事に決定権のある人と直接話が出来る小規模組織
  • 業種:フリーランスでも成り立ちうる業種

だと思っています。
この条件で探したとしても十分に厳しいには違いないのですが、まず事業規模について考えてみましょう。

障碍者雇用

現在無職ではあっても、十分に回復しており病気の配慮は一切なくても働けます!という人は、人材紹介会社なりハローワークなりに通い詰めて大量に応募すれば、いいご縁もあるかもしれません。
ただ、もう少し状況が悪く、無職・ブランクありの上「一定の配慮も必要な」うつ病患者の再就職はもっとずっと厳しいですよね。

障碍者手帳を既にお持ちの方や申請すれば取得できる病状の方は、「障碍者雇用」という選択肢があります。

「精神障碍者である」ということを公にすることにためらいがある人も多いでしょうし、障害者雇用は現状、精神障害者は圧倒的に不利なのも事実です。

障害者雇用の内訳を見ると、身体障害者が約76%、知的障害者が約20%であるのに対し、精神障害者は約4%と大きく差が開いている。

JB PRESS「企業は精神障害者を受け入れる準備を」
しかし、近年の障碍者雇用率の引き上げなどの流れを受けて積極的に雇用を進めている企業もあるとのこと。

私は障碍者雇用は未経験ですので詳しくは書けませんが、いかにもな単純作業を延々やらせるような企業、障碍者枠で入っても全く配慮がない企業などもあるらしい一方、障碍者雇用率を達成しようとする企業は比較的大手で社会的信用にも配慮している企業も多いでしょうから、いい就職先に巡り合える可能性もあります。

就職に当たり外れがあるのは一般雇用も同じで、また障碍者枠での就職活動と一般枠での就職活動は並行してはいけないというルールがあるわけでもないので挑戦する価値はありそうです。

小規模な組織がいい理由

想像してみてください。あなたは企業の採用担当。肩書きは係長です。
一次面接を行って、よさそうな求職者のリストを課長や幹部に上げるのが役目です。
会社が欲しがっているスキルが抜きんでており、受け答えの感じもよく、「あ、いいな」と思った人の履歴書に病歴が書かれていたり、不審なブランクが空いていたら。
上司に推薦出来ますか?「どうして病人がリストに入っているの?」と課長に問いただされても面倒だし、自分の評価が下がったら嫌だし、係長クラスでは採用後の責任も取れない。
ならばもっと色々な意味で無難な人・・・スキルはほどほどでも学歴や職歴、健康状態が問題ない・・・を推薦しよう。そう思ってしまうのが人情というものです。
つまり、採用プロセスに関わる中間管理職が多い企業ほど、うつ病者のような「無難でない」労働者は採用されにくくなるのです。

また、障碍者枠での就職を除けば、一定規模以上の企業の従業員には一般に「粒ぞろい」であることが求められます。こういう企業では人事異動があるのが常。本人や上司・同僚に人事異動があってもすぐに新しい状況に馴染め、働ける人材が求められます。
「一定の配慮が必要な」うつ病者はこの条件も満たしていません。

これが、ワンマン社長の小規模企業などの場合は、社長が事実上、全権を持っています。社長が面接をして、社長がオーケーと思えばオーケーです。
また、小規模組織では大企業と比べて「個」の占める割合が大きい。デメリットがあってもそれを上回るメリットがあれば採用されることもあり得るわけです。

大企業ならまっとうな職種はフルタイムが前提ですが、小規模組織では、たとえば「経理は必要だけれどフルタイム分も仕事がない」ことだってあります。
フルタイム勤務は無理はうつ病者でも、需要と供給がカチッとはまることが、ないとはいえない。

ここで「小規模な組織」というと夫が社長で妻が専務で、妙に風通しの悪い旧体質の家族経営企業を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、フランチャイズ店の店長、士業の事務所など、小規模な事業体にも案外色々あるものです。
私自身、無職で再就職なんて無理!と絶望していた時に、無職から再就職を果たした経験を持つ方に勇気づけられたのですが、その方のバイト先はコンビニでした。店長に事情を説明して受け入れてもらったとのことでした。また私自身は、規模は大きい会社なのですが、そこで数名の部下を雇う予算と権限を与えられたプロジェクトリーダーのプロジェクトを手伝っています。

フリーランスでも成り立つ職種がいい理由

次に、職種です。
私がフリーランス(個人事業主)の立場で働いているのは体調上選択の余地がないだけで、労働形態としてフリーランスを推奨しているわけではありません。個人事業主は雇用が不安定だとして問題となっている派遣社員よりなお不安定な立場ですから。もちろん、体調は改善しているのに企業への就職にこだわるために無職を続けている方がいるのであれば、個人事業主からでも働いた方がいいとは思います。

そういう労働形態の議論はとりあえずは置いておいて、今言いたいのは、無職期間が長引いてしまったうつ病者は「フリーランスでも成り立つ職種」を狙っていくのがいいだろうということです。
私の場合は在宅で、統計処理、ガチガチの理系の文章を専門外の人向けに書き直す仕事、Webサイトの構築や更新といった業務を行っています。

他にもプログラマー、翻訳者、ライター等、フリーランスでも成り立つ仕事というのはどれも専門性を求められますから、たとえばこれまで事務しか経験してこなかった人がちょっと勉強した位では専業プログラマーとして就職するのは難しい。
また、業界的に激務かつ変化が激しい業界も多いので、うつ病者が専業でやっていくには厳しい業界です。
でも、もう少しユルく考えてみましょう。なにも専業でなくともいいのです。
「Web更新を担当出来る」販売員は、商品情報やらを頻繁に更新したいけれど一々外注するのは大変、と思っている店長には有難い存在でしょう。
「翻訳も出来る事務」も、プロの社内翻訳を常駐させるほどではないけれどたまに英文案件が来るよね、位の事業所にとっては便利な存在でしょう。そこから始めればいいのです。

このような職種を勧めるのには3つの理由があります。

ひとつめには、こういう職種ですと専門性があれば「年齢相応の管理能力」が無くても雇われる可能性がある。専門スキルもまた実務経験をこなす過程で身に付けていく方が上達が早いですが、療養中でも勉強して身に付けることが不可能ではありません。総合職・一般職的な業務では歳を取るほどに「管理能力や社内での立ち回り」「部下を育てる能力」を求められますが、会社に属さぬ身でこれを身につけるよりは現実的だと思いませんか?
長らく無職で療養していれば、管理能力どころかイチ社会人としてそつなく振る舞うことさえ覚束なくなるのですから!

ふたつめは、マイペースに仕事を進めやすい。休みがちでどうしても他人と同じペースでは働けない人がいわゆる「ライン」に組み込まれ、同僚と仕事を分け合う形になると、うつ病者が休むたびにフォロー役の人に負担がいきます。・・・居づらくなります。
一人でひとまとまりの仕事を請けて行える仕事は、一般的にいうと日々勉強が必要で決してラクではない業務が多いです。また、これなら迷惑はかからない!とまでは言えません。それでも途中で休むことがあっても自分でフォローして〆切に間に合えば会社に迷惑がかかりにくいという点で、うつ病者が働くには無理が少ない

そして三つ目。
・・・うつ病者の場合は再就職を果たしても、病気が再発・再燃して再度辞職に追い込まれるリスクが他の人達よりずっと高いのが現実です。
社内人脈やら社内ルールに沿った事務処理スキルは、ここでリセットされてしまいます。
社外でも通用するスキルの割合が大きい職種であれば、働いて得たスキル分は蓄積されていきます。・・・もちろん、ブランクが空けばスキルは古くなってしまうので万事OKとはいきませんが、ダメージは少なくて済みます。

うつ病になってからでも遅くはない

自分は普通のサラリーマンだったんだ。フリーランスでも成り立つような仕事のスキルなんかないよ!
そんな声が聞こえてきそうですね。私は実際に言われたこともあります。
「私はあなたと違って専門スキルなんてないから」と。

私も、確かに理系出身ではありますが大学院にも行っていないですし、就職したのは専門職ではなく総合職。専門スキルはありませんでした。Webなんて触ったこともありませんでした。辞職直後は次のプランなど何も思い浮かばずにただ呆然とするばかりでした。

うつ病になってから、ジタバタジタバタと足掻きました。
うつ病を背負いながらの勉強は、健康な時と比べるととてもノロい上、仕事に結びつく日がくるのか、来るとしてもいつ来るのか全く見えない辛いものですが、何年も無職だった間に、それはそれは足掻きました。

最初は普通に治って普通に再就職するつもりだった。治らないので、次にとある難関の資格職の勉強を始めました。うつ病で辞職した私の場合、資格を取るということは「資格を取れる体調にまで回復していますよ」という証明にもなる。ブランクがあっても比較的就職しやすいはず、と踏んだのです。
けれど、延々「資格を取れる体調」は戻らず、また資格職は大抵厳しい〆切があったりして、よほどスッキリ完治しない限り、休み休みしか働けないうつ病者が就けるような仕事ではないと分かってきた。
・・・自分のこの体調では無理だと、分かってきた。
そこで次第に、在宅でも出来そうな分野に絞っていきました。資格は結局諦めましたが、その時勉強したことも仕事で文章を書くのに役立っています。

さらに、今の仕事は知人づてに紹介されたものでしたので、ラッキーと言えば物凄くラッキーでした。ただ、チャンスは私がその仕事に「ふさわしい」と思われなければ訪れなかったし、私自身も再就職に向けた臨戦態勢でいなければ、そのチャンスを掴めなかったのもまた事実です。

再就職してからも、きつかった。まず、「紹介」だったので就活はしなくてよかった代わりに、時期も選べなかった。医師の診立ては「就労不能」でした。就労前に医師に相談はして「やってみたら」とは言われたのですが、反対したら悔いが残るだろうと思われていたに過ぎませんでした。
時が流れれば技術も技術を取り巻く状況も激変します。数学など使わなければすっかり忘れますし!理系は似た事をやっているようでも分野ごとに必要な知識が違ってきますので全然違う分野の専門書を読む必要もあり、仕事を始めた最初の年は、仕事用の身なりを整える出費に加え、在宅で業務をするためのパソコン他諸経費や(在宅はそれ自体「例外措置」だったので、仕事に必要な備品も消耗品もすべて自腹でした)、書籍代、そして具合が悪くても打合せに出るために職場のごく近くのホテルに泊まったり・・・少ない報酬が吹っ飛んで後には灰も残らない、というか赤字?位の勢いでした。

なぁんか周りはもっとヌルイ生き方しても普通に稼げて、普通に遊んで?そんな人も多いように見えるのに、こちらは病気という無駄なものとの闘いで消耗してしまうせいで、ここまで頑張っても中々報われない。人生不公平・・・と思うことはあります。

某有名漫画で「あきらめたら、そこで試合終了だよ」なんて名台詞がありましたね。
うつ病者は、諦めなくても勝てないかもしれない。
でも、諦めたら、そこで終わりという事だけは確定している。
それはうつ病の・・・いえ。すべての人の人生に当てはまるのかもしれません。

ちょっと話がそれたでしょうか。

巷には「うつ病でも再就職出来る!」とかいうサイトもあります。商材サイトが多いですね。
私もそんな歯切れのいい記事を書きたかったのですが、書けません。嘘を描かない限り、「これさえすれば就職出来ます」なんて記事は、書けません。
この記事をご覧の方にも思い詰めていらっしゃる方が多いかと思うのですが、怪しい商材なんて、買っちゃダメですよ?
この商材の通りにやれば就職できるとか、そんな美味い話は、ぜっっっったいに、ないですから。

でも、捨てる神がいれば拾う神もいて、99の神から捨てられたとしても、たった一か所の「拾う神」に巡り合えれば道が開けるのも確かです。

今無職療養中だけれどどうしても社会復帰したいと悩んでいる方の参考になれば幸いです。

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